【読書】こどもの一生
読んだ本
- 作者: 中島らも
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/07/20
- メディア: 文庫
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久しぶりに小説を読みました。
※本のネタバレを含みますので、読みたい方は閉じてください。
感想
スポーツの快楽原則
辛い時間と休みの時間を交互に設ける。そうすると休みの時間に快楽が存在するため、辛い時間を日常的に行うようになる。
「だいたいがスポーツなんていうものは、この快楽原則にのっとって存在するものなんですよ。私は格闘技もたくさんやったが、つまるところ全てこの原則に基いています」
ストレス解消法
心理療法を行なっている院長が言っている言葉です。ストレスを解消するために野蛮なことをするのが一番早いということ。
考え方がとても面白いなと思いました。
「そうだね。だから誰もがその解消法を求めてうろたえている。これは案外知られていないことなんだが、ストレスを解消させるためにはね、〝野蛮なこと〟をするのが一番なんだよ」
現実と非現実の曖昧さ
本書の終盤では、こどもたちが生み出した不気味な存在と戦うことになります。
空想上の存在にも関わらず、「そこにいる」という、曖昧な存在に対して、どう向き合うかを考えさせられました。
また、終盤はホラーです。ホラー小説は始めて読みましたが、描写が不気味でとても怖いなと感じました。
こどもの描写の不気味さ
本書は、大人たちが心理療法によって、10歳のこどもに戻るという展開です。
大人たちがこどもにもどっているときには、こどもの言葉として描写されています。
「でもね、ちゅういしなくちゃいけないのは、山田のおじさんはふつうの人間だってことなんだ。ごくごくふつうのおじさんじゃないと、かえっておもしろくなくなる。ちょうのうりょくしゃだったり、ツバサがあってそらをとべたりとか、そんなんなっちゃダメなんだ。だから、かっちゃんがいったみたいに、カラテはすこしやったけど、でも〝つうしんきょういく〟。これ、だいせいかい。フラット・マンドリンがひける。これ、ギリギリのせんだ。だから、〝こせい〟のはんいからとびだしちゃだめだ。ちょう人じゃだめなんだ。ぼくらがつくるのは、山田一郎さんっていう、まあちょっとかわったところはあるけれども、きほんてきにはそのへんにいるごくふつうの、あたりまえのおじさんでないといけない」
とても気味悪い世界だなと思いました。